購入した住宅が欠陥住宅だとしたら、こんなショックなことはありません。新築住宅を引き渡しする際に起きるトラブルには、内装のキズや床の傾斜、引き渡しが遅延しても遅延損害金を負担してくれないなどがあります。
このようなトラブルが発生したときは、施工業者の「契約不適合責任」を追及することができます。契約不適合責任とは?契約不適合責任の追及方法や追及する際の注意点について解説します。
施工業者の契約不適合責任を追及するためには、契約と違うことを証明するための証拠が必要となります。契約書や見積書、図面等は確認・保管しておきましょう。契約内容と異なる、施工されているべきところが施工されていない、工事が雑である場所の写真や動画で撮影する、住宅診断での調査をおこなうなど、証拠調べをしてその結果を保全しておきましょう。
引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合、売主が買主に対して法的責任を負います。契約不適合責任とは、それと同じものを請負人が注文者に対して負う法的責任のことです。
契約に従って工事を完成させるのは、請負人の契約上の義務であり、注文者に対して引き渡した目的物が契約内容と合っていなければ請負人の債務不履行となります。
民法では注文者に、請負人に対する契約不適合責任を追及する方法として以下の4つの方法を認めています。
注文者(施主)は請負人(施工業者)契約不適合責任を追及する場合、状況に応じて「履行の追完請求」「代金減額請求」「損害賠償請求」「契約の解除」の4つの方法を用いることができます。
損害賠償請求では施工不備の原因によるケガや家具・設備の腐食などが対象となります。また、契約解除には全部解除と一部解除があり、新築工事の請負契約を解除することができます。
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。(民法第562条)
(有償契約への準用)この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。(民法第559条)
※引用元:「e-GOV」
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
(買主の代金減額請求権)前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。(民法第563条)
(有償契約への準用)この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。(民法第559条)
※引用元:「e-GOV」
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)
(有償契約への準用)この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。(民法第559条)
(債務不履行による損害賠償)債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。(第415条第1項)
※引用元:「e-GOV」
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
(買主の損害賠償請求及び解除権の行使) 前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。(民法第564条)
(有償契約への準用)この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。(民法第559条)
(催告による解除)当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。 (民法第541条
(催告によらない解除)次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。1.債務の全部の履行が不能であるとき。2. 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。3. 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。4. 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。5. 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。(民法第542条)
※引用元:「e-GOV」
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
契約不適合責任を追及する際に注意することは、助成金については説明義務がない、細かいキズや汚れは引き渡し前に指摘する、契約内容はしっかり確認する、施主支給については原則として契約不適合責任が発生しないということを頭に入れておきましょう。
新築工事で助成金を利用できますが、施工業者は施主に利用可能な助成金や住宅ローン控除の説明義務がありません。施主は助成金について説明されず利用できなかったからといって施工業者に不適合責任を追及することはできないので注意しましょう。
細かいキズや汚れは施主がつけた可能性もあります。施工業者に主張するには施主が立証しなければなりません。立証するのは困難です。引き渡し後に指摘しても施工業者は対応してくれないでしょう。引渡し前、内覧の段階で部屋の隅々まで必ずチェックしてください。キズが見つかったときは担当者に補修を求めることができます。
契約内容は要注意です。新築工事の契約で「〇〇で良い」と定められていれば、その内容は施主が「了解済」だと取り扱われます。この場合、契約不適合責任対象外となるため、契約内容はしっかり確認してください。疑問がある場合は施工業者に修正を求めましょう。「言った」「言わない」のトラブルを防ぐには文章に残しておくことが大切です。
施主が提供した建築用資材の材質や施主が指摘した不具合では契約不適合責任の追及は原則として認められません。ただし、施工業者が材料・指図の不適当を知りながら告げなかった場合、契約不適合責任は認められます。
施主が施工業者に対して、新築住宅の契約不適合責任を追及できる方法を知ることはできても、法的なことを考えれば、それを利用するのは難しいでしょう。施工業者に反論されるかもしれません。反論されたらきちんと答えることができるでしょうか。個人で対応するのは難しいため、トラブルが発生した際は弁護士に相談しましょう。弁護士なら状況に応じてサポートしてくれます。