欠陥住宅の中でも基礎にあたる部分に問題が生じている場合には、なるべく早急な対応が必要となります。基礎部分に不具合いがあると、地震などの揺れに住宅が耐えられないおそれが高まってしまいます。ここでは、住宅の基礎部分に生じる欠陥「クラック」に注目しています。
建築用語での「クラック(crack)」も、英語のまま「裂け目」や「割れ目」という意味で用いられています。
住宅における「クラック」とは、建物の外壁・内壁、そして基礎にできる「ひび割れ」や「亀裂」を指しており、特に乾燥の過程で収縮する性質を持つモルタルやコンクリートではクラックが発生しやすいといわれています。
建物の基礎にあたる部分にもコンクリートが用いられているため、やはりクラックが発生してしまうことがあります。
「瑕疵保険」などでも知られる「瑕疵」とは、建物などに何らかの欠陥や破損があり、契約で交わした内容と品質が異なっていたり、性能を欠いた状態であることを指します。
基礎にクラックが生じた場合には、この「瑕疵」に該当していることも考えられます。その場合、責任はどこに問えるのかをここでは説明いたします。
基礎部分にクラックが認められた場合、施工会社への瑕疵責任は問えるのでしょうか。
ただ、その前にまずクラックのでき方や原因を調べる必要があります。基礎にクラックができていたとしても、それがすぐに瑕疵と認められるわけではないからです。
国土交通省告示1653号では、クラックのひび割れ幅に対して技術的基準が制定されています。
これによれば、ひび割れが0.3mm以上かつ0.5mm未満の場合には、構造耐力上の重要部分に瑕疵が生じるおそれがあるとしています。さらに0.5mm以上のひび割れの場合は、そのおそれが高まります。
ひび割れが0.3mm未満であり、基礎の表面へと毛髪状の細いひび割れ(ヘアークラック)が生じているのであれば、住宅など建物の構造部分にはほとんど影響がないと考えられます。
基礎の表面にではなく、構造耐力上において重要部分に瑕疵が生じている場合には、建物の強度や耐久性を保つためにも補修が必要となります。施工会社へ瑕疵責任を問うことを考えて下さい。
基礎にクラックが生じていた場合、施工会社は瑕疵を認めてスムーズに対応してくれることもあるでしょう。しかし、施工会社やそのときのクラックの状態や原因によっては責任を負ってもらえないおそれもあります。どのような対応がみられることがあるのでしょうか。
基礎にクラックが認められた場合は、まず施工会社に報告を行います。すると施工会社がクラックの状態や原因と状態を検証しますので、それを踏まえて話し合いへと入ります。
修補不要であると判断された場合はその説明をされます。納得がいく理由であると感じたならクラックはそのままにされます。
逆にクラックへの修補が必要な場合は、その費用などを含め、瑕疵として扱われるかどうか、どちらが責任を負うかをやはり話し合って決めなくてはなりません。
もし話し合いが難航するようであれば、弁護士を介入させて対話を進めることも考えていきましょう。
弁護士を交えた協議でも問題が解決しないときは、裁判所の調停や建築工事紛争審査会の仲介を検討しましょう。
調停や建築工事紛争審査会の仲介では、専門の委員が両者の言い分を聞き、双方の譲渡によって解決を試みます。
ただし、調停でも建築工事紛争審査会でも、両者の同意に基づいて協議を導くため、一方が合意しない場合は解決に至りません。
弁護士の介入、裁判所の調停や建築工事紛争審査会の仲介でも問題が解決しないときは、施工会社に対し、施工不良による損害賠償請求などの訴訟提起を行うという手段もあります。
裁判を行うかどうかは弁護士とよく相談した上で取り決める必要があり、その弁護士自体も建築分野の訴訟を得意としているかどうかなど選定も大切になってきます。
住宅の基礎は、建築物の耐震性や耐久力にも直結してくる要の部分です。そこにクラックが生じているのが認められた場合は、地震などの災害においても、長く暮らしていくことを考えても、不安のよぎる要素です。クラックを放置しておくことで、さらにひび割れの幅が広がるかもしれません。
施工会社に責任があるようであればしっかりと対応してもらいたいところですが、話し合いをしても解決が難しいという場合には、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。